山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「恋は雨上がりのように」

眉月じゅんさんの同名漫画が原作の「恋は雨上がりのように」。予告動画を観てこれは面白そうだとピンと来て、5月の公開を心待ちにしていました。が、結局、映画館で観ることができず・・・。この度、Amazon Primeで公開されたので速攻で視聴し、そのあまりの完成度の高さに映画館で観なかったことを心から後悔しました。

大怪我を負って陸上競技から離れた17歳の女子高生・あきらが、小説家の夢に破れ、離婚も経験し、ファミレスで店長として働いている45歳の冴えない中年男性に思いを寄せるという恋愛物語。単なるラブストーリーで終わらず、挫折を味わって心に葛藤を抱えている二人が次の一歩を踏み出すまでの人間物語となっています。まずは、映画と肩を並べるほど完成度の高い主題歌「フロントメモリー」のPVを御覧ください。

 


アクセル全開の疾走感、不安や葛藤を隠さない潔さ、ふと立ち止まったときに支えてくれる仲間の温かさ・・・この映画の魅力が余すこと無く表現されています。原作者の眉月じゅんさんは、元々この「フロントメモリー」のオリジナルバージョンをイメージして原作を描いていたそうです。映画化にあたってそのまま主題歌に起用してしまう制作陣のファインプレーに拍手!

店長役の大泉洋さんは、冴えない中遠男性を演じさせたら右に出るものはいませんね。そして、あきら役の小松菜奈さん。表情や佇まいだけで画面を支配してしまうほどの存在感で、座ってピザを食べているシーンだけでも絵になります。感情表現が下手でいつももどかしい思いをしているあきらというキャラクターが、完璧に再現されていました。原作ファンも文句のつけようがないでしょう。

タイトルにもあるとおり、この物語に雨は欠かせません。雨が降るタイミングで話が大きく進展します。ただ雨が止むのを待ってるだけじゃつまらない、雨の後には必ず雨上がりがある、そんな押し付けがましくない前向きなメッセージが静かに伝わってきます。挫折は誰にでも訪れるもの。そのときに支えになってくれる人がいたら、その人のことを大切にしよう。でも、いつまでも甘えていてはだめ。少し立ち止まって力を蓄えたら、また走り出そう。

実は、この映画のかなりの部分は私の地元である横浜の能見台というところで撮影されていて、私にとっては特別な思い入れも生まれてしまっているのですが、その点を差し引いても素晴らしい映画であることは間違いありません。映画館で観る機会を逃したことをひたすら後悔しています。