山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「オーヴァーロード」(Overlord)


現在公開中の2018年のアメリカ映画。一応のあらすじとしては、第二次世界大戦中、ドイツ軍占領化のフランスに上陸した連合国軍のアメリカ人兵士たちが、ドイツ軍の秘密施設の破壊作戦を決行するという話です。タイトルのオーヴァーロードというのは、ノルマンディー上陸作戦(Invasion of Normandy)の別名(Operation Overlord)だそうです。

冒頭で「一応」と書いたのは、あらすじをなぞるだけでは本作がどのような作品なのかを伝えきれないから。まず、序盤は立派な戦争映画として作られています。連合国軍の兵士たちが、空中戦をかいくぐって戦闘機から落下傘部隊としてフランスに降り立つ際の場面から始まる冒頭のシーンは、その辺の戦争映画顔負けの迫力です。

このまま緊張感のある戦闘シーンが続のかとこちらが覚悟を決めたところで、視聴者をあざ笑うかのように、徐々に良くわからない演出や不自然な設定が増えていきます。そこから加速度的に作品の方向性が変わり、ドイツ軍の秘密施設に潜入してその実態を暴くというスパイアクション映画に。さらに後半には、モンスターと化した捕虜やドイツ兵たちからいかにして逃れるかというゾンビ映画へと発展し、B級映画風の演出が炸裂するようになり、結局最後は戦争映画的な場面に戻って静かに幕を閉じます。

どのようなジャンルに分類すれば良いのか全くわかりませんが、とにかく、強烈なインパクトを与えてくれる作品です。物語途中でのジェットコースターのような作風の変調やB級映画風の演出は、いずれも意図して作られたものであることは明らかで、あの名作(迷作)「フロム・ダスク・ティル・ドーン」( From Dusk Till Dawn)に通じるものを感じました。

制作は「ミッション・インポッシブル」(Mission: Impossible)シリーズでお馴染みのJ・J・エイブラムス(J.J. Abrams)という超大物ですが、その一方で、制作スタッフや俳優陣はあまり知名度の無い新進気鋭の顔ぶれとなっています。このような制作側の布陣からも、A級とB級のミックスという本作の位置付けや狙いが伺えます。

日頃のストレスで凝り固まった頭と心をリフレッシュするには、これくらいぶっ飛んだ映画が最適かもしれません。ちゃんとエンターテイメント作品として楽しめる内容になっていますので、ありきたりではない映画を見たいという方には是非おすすめしたい一本です。