山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(Spider-Man: Far From Home)」

3月にスピンオフ作品の「スパイダーマン: スパイダーバース(Spider-Man: Into the Spider-Verse)」をレビューしたばかりですが、早くも本家スパイダーマンの新作が公開されました。今回は気合を入れて3D IMAXで見てきました。

スパイダーマンと言えば、何と言っても蜘蛛の糸がにゅいーんと伸びるアクションシーン。本作でも、スピード感のある映像美は健在でした。3D IMAXだと、手を伸ばせば届きそうな立体的な映像と音響効果の相乗効果で、本当に迫真性のある追体験を味合うことができます。この迫力は、映画館で見なければ味わえませんね。

物語はというと、味方だと思っていた相手が実はとんでもない悪者で、最初の対決でに完膚なきまでに叩きのめされたスパイダーマンが、どうやってどん底から這い上がってリベンジするかというのが筋になっています。この敵役、元々の原作漫画でも登場していたのを現代風にアレンジしたキャラクターのようですが、人格面でも能力面も個性が爆発していて、この曲者のヒールの存在によってヒーローであるスパイダーマンの活躍が引き立っていました。

一方で、敵役の強い個性が故に「とにかくこいつを懲らしめなければならない」という至上命題が物語を支配し、今までのスパイダーマン作品にあった「どうして戦わなければならないのか」「善と悪は割り切れるのか」といった心理面での葛藤がどこかに行ってしまったのも事実。元々スパイダーマンシリーズは、精神的に未熟な主人公がそのままヒーローになってしまい様々な矛盾に直面し思い悩むという点が一つの魅力であり、また、シリーズ全体に深みを与えてきたのだと思います。その点からすると、本作は単なるヒーロー物のエンターテイメント作品に近くなってしまったような印象が拭えませんでした。

アベンジャーズの世界観との繋がりを保つために、本筋とは必ずしも関係の無い展開が挿入されている点も少々気になりました。せっかく映画の世界観に没頭しているのに、「あ、付け足しのシーンだな」と感じると、いきなり現実に戻されたような気がしてしまいます。いろいろな要素を付け足して豪華な装いにするよりも、すっきりとしたシンプルな作品の方がエンターテイメントとしても良くないでしょうかね?

気がつくと、「スパイダーバース」のレビューと同じような感想になってしまいました・・・(笑)