山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「天気の子」

新海監督の最新作「天気の子」が遂に公開されました。前作「君の名は」では、公開初日に舞台挨拶付きの回を最前列で鑑賞し、新海監督のツイッター写真に映り込んだのが良い思い出になっています(笑)。今回も運良く初日舞台挨拶付きチケットに当選し、意気揚々と観に行ってきました。


家出した少年と天気を操る力を持つ少女が出会い、意外な形で世界のあり方に影響を与えていくという、ファンタジーと現実の間のストーリーです。主人公の二人は、後ろ盾が無く吹けば飛びそうな危うい存在。そんな彼らの「社会」との関わり方、彼らの目線から観た「社会」のあり方というのが、物語序盤の核になっています。

話が進むに連れて、主人公たちは、「自分(たち)」と「社会」という対立軸の中で翻弄されていきます。突発的に「生きる意味を見つけたい」「大切な誰かと一緒にいたい」と思う、ところが、その気持ちを貫くことは他の誰かに迷惑をかけてしまうことを意味する。そんなとき、私たちはつい、自分で自分を制御してしまいがちです。

しかし、この映画の主人公たちは、周囲に迷惑をかけることを顧みずにとにかく自分の気持ちを貫いてまっすぐに進んで行きます。物語の中盤以降では、なぜそのような行動に出るのか合理的な説明もないままに、ひたすら衝動に突き動かされて自ら破滅を招く行動に出ていきます。

賛否両論分かれるところかもしれませんが、私は疾走感のある展開とこの若々しい向こう見ずさがぴったり合っていて、かえって清々しく感じました。いつの間にか漠然とした「社会」というものに自ら忖度することに慣れてしまった私たちですが、本当は、彼らのように、もっと自分の気持に素直に生きてみても良いのではないでしょうか・・・

本作は物語の最初から最後まで雨が降り続いているという設定なのですが、新海監督が描く「雨が降っている東京」の風景は、本当に美しいですね。あと、ビジュアル面では、これまでの作品にはなかった夜景やカーチェイスの場面が盛り込まれていたのが新鮮でした。技術的なことはよくわかりませんが、他のアニメーションでは見られない立体的な風景の動きが際立っていました。最近は新海監督っぽいテイストのアニメーション作品が沢山登場していますが、ちょっとしたビジュアル一つとっても、やはり他のそれっぽい作品と本家本元の新海作品では雲泥の差があるように思います。

もちろん、絶妙なタイミングで奏でられる音楽とのハーモニーも健在。ストーリー、セリフ、映像、音楽といったものの合わせ技こそが新海監督の真骨頂ですが、これはやはり大画面と大音響の映画館でこそ堪能できるもの。普段あまり映画館に行かないという方にも、是非、映画館に足を運んでいただきたいですね。

舞台挨拶では、新海監督自ら「みんなにハッピーな気持ちになってもらえるような映画をつくりました」と言っていました。そのとおり、「君の名は」のような派手さはありませんが、心にじわーっと染み入って来て最後にほっこりとした温かい気持ちになれる、そんな良い映画でした。

すばらしい映画を届けてくれた新海監督と製作スタッフの皆様、どうもありがとうございました。