山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「ロケットマン(Rocketman)」


エルトン・ジョンElton John)の半生を描くノンフィクション映画。伝説的なミュージシャンの自伝的映画は、ここ数年ですっかり映画の一つのジャンルとして市民権を得ました。私がこの1年ほどの間にこのブログでレビューしただけでも「黙ってピアノを弾いてくれ(Shut Up and Play the Piano)」、「グリーンブック(Green Book)」、「ボヘミアン・ラプソディBohemian Rhapsody)」とあり、本作が四作目になります。どのミュージシャンも個性が爆発していて、映像化した作品群には外れがありません。

さて、本作、「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした直後であり、かつ制作スタッフも共通しているということで、何かと比べられているのを目にします。私もつい比較しながら観てしまったのですが、本作は本作で十分魅力的な作品だと思いました。

ボヘミアン・ラプソディ」は音楽のシーンでは基本的に視聴者にQueenの楽曲に集中してもらうという作りでしたが、本作「ロケットマン」では使用されている楽曲の一部がミュージカル風にアレンジされていて、楽曲のシーン中でもどんどん物語が進行していきます。エルトン・ジョンの内面についての掘り下げを本人の楽曲の力を借りて行ったのは、大成功だったと思います。

エルトン・ジョンは、最近では「歴史上最も成功したミュージシャンの一人」「セクシャルマイノリティの象徴」というクリーンなイメージが定着していますが、若くして成功した後しばらくは退廃した生活に溺れ精神的にも暗闇の中を彷徨っていました。しかし、そこから鮮やかな復活を遂げ、今では、偉大且つ奇抜な「エルトン・ジョン」というキャラクターの人生を楽しんで生きているように見えます。こういった光と陰に彩られた人生に、私たちはどういうわけか強く惹きつけられてしまうのですよね。

ところで、エルトン・ジョンは、2017年の映画「キングスマン: ゴールデン・サークル(Kingsman: The Golden Circle)」で本人役を演じ、視聴者の悪い予想を大幅に裏切る形で自分自身のキャラクターを見事に演じきっていました。その「キングスマン」で主役を演じエルトンとも共演していたタロン・エガートン(Taron Egerton)が、今度は本作でエルトンの役を演じているというのも何とも面白いところです。目や口の微妙な動かし方で、エルトンの複雑な心の動きを巧みに表現していました。タロンくん、あなた良い役者になりましたね!