山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「スタートアップ・ガールズ」

山崎紘菜さんと上白石萌音さんという、東宝シンデレラオーディション出身の二人の若手女優がダブル主演を務めている映画。本来観る予定はなかったのですが、先日、某所で「ちょうどこの場所で撮影をしていたんですよ」という話を聞いて興味が湧き、早速映画館で鑑賞してきました。

他の人のレビューを見るとなかなか酷評されていますが、個人的には結構楽しむことができました。本作は表題のとおり起業家のスタートアップをテーマにしていますが、単に話の枠組みとしてスタートアップの状況を拝借しているだけで、実は現代社会における女性の活躍に焦点を当てた作品です。

事務作業の負担の重さで悩んでいる保育士、その課題を解決したいと思っている起業家、その事業に投資しようとしている大企業の担当者、彼女たちを優しい眼差しで応援するバーのママ、本作の中心人物は皆、女性です。社会の中での立ち位置や一人の人間としての成熟度は異なりますが、どこか楽しそうに一生懸命生きています。実は、監督の池田千尋さんも女性。口論のシーンでもあまり刺々しい雰囲気にならず、全体的に緩いムードにつつまれているのは、池田監督ならではですね。

一方、本作に登場する男性のキャラクターは、でしゃばりすぎず、でも肝心な時にはしっかりと頼りになるナイスガイばかり。現実にはこんな理想的な上司や同僚は、そうそういません。本編中に時折、東京の高層ビル群が上下逆さまに移されるカットが挿入されているのと相まって、現実の男性社会に対するアンチテーゼなのかなと思ったりしました。

残念だったのは、スタートアップについての描写があまりにも表面的な点です。それを補うように、冒頭で実際の起業家たちがスタートアップについて語っているインタビュー風の動画が流れるのですが、逆に寒い演出になってしまっていました。酷評されている要因もこの辺りにあるでしょうね。ほっこりとした気持ちになれる良い映画だと思うのですが、タイトルで損している感じがしてちょっともったいないと思いました。