山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」

1年ぶりの更新になってしまいました。毎月映画を何本か観て、その中から気に入った作品をブログで取り上げて、というリズムがコロナで壊れてしまい、そこからなかなかに戻れずにいました。私は結構趣味が移り変わっていく傾向のある人間なので、映画鑑賞の趣味もこんな風にして徐々に終焉に向かって行くのかな・・・と、我ながら寂しく思うときもありました。しかし、ここに来て、特に理由も無く突如として自分の中の映画熱が再燃。まず、鑑賞後もレビューしないままになっていたシン・エヴァについて取り上げたいと思います。

まずは作品情報から。シン・エヴァは、2007年から順次公開されているエヴァンゲリオン劇場版4部作の最終作であり、かつ、1996年のテレビシリーズ放映から25年間続いてきたエヴァシリーズの本当の意味でのエンディングを描いたものです。エヴァ現象に乗り遅れること二十数年、四十路を超えてエヴァデビューした私ですが、あっという間に独特の世界観に心を奪われ、今回の新エヴァも劇場公開直後に2回観に行ってきました。レビューを温めている間に予想を遥かに超える大ヒットになり驚きました。

私が最初に鑑賞したのはまだ公開直後、しかも平日の日中だったので、映画館に観に来ている人たちはほとんどが熱心なエヴァファンだったと思われます。上映開始前から館内に「これから壮大な物語の終幕を目撃するのだ」という独特の緊張感が漂っているように感じました。そして本編開始。世界観、物語、ビジュアル、メカニック造形、音楽、視覚効果、声優陣の声の力。エヴァが帰ってきた・・・!という感動が観客席に広がっているのが手に取るように伝わってきました。

本編が終了しエンドロールが終わりましたが、しばらく座ったままで一つの壮大な物語の完結を目にしたという余韻に浸っていました。他の観客の人たちも同じようにしていて、皆、感慨ひとしおのようでした。映画館でこういう状況に遭遇したのは、以前レビューしたスターウォーズシリーズの最終作「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(このときはエンドロールの後、劇場内で自然に拍手が鳴っていました)以来です。やっぱり、映画って良いですね。

ストーリーについては、これもいつものエヴァと同意用、視聴者の理解を拒絶するかのような難解なものになっています。物語の行く末を左右する重要なシーンに限って難解な専門用語の応酬や思わせぶりな短い会話で完結し、背景事情の説明が気持ち良いくらいに省略されるのに対して、本筋とは直接関係ないと思われる場面では妙に丁寧な情景描写が展開されます。ただ、この一見すると破綻しているように思えるアンバランスな構成配分が、視聴者に「何となくわかるけど具体的にはわからない」「雰囲気は味わったけど理解はできなかった」という絶妙な印象を与え、そして結局は、何度も鑑賞しようと思わせてしまうのですから不思議です。

シリーズを見て予備知識を入れてから見ると一層楽しむことができることはもちろんですが、全くの初心者が初見で本作を見た場合でも、エンターテイメントとしてのエヴァの魅力は十分に堪能できるのではないかと思います。実際、二度目の鑑賞に同行してくれたエヴァ初心者の友人は、「何だかよくわからないけど凄いものを見た気がする」と、図らずとも本質を突くような鋭い感想を言っていました。

庵野監督の次作は「シン・ウルトラマン」ですね。公式サイトに自嘲気味に「鋭意制作中」「公開日調整中」と目立つように書いてあるのを見て、思わず笑ってしまいました。庵野監督、制作に関わった全ての方々、素晴らしい作品を世に送り出していただき本当にありがとうございました!