山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「マスカレード・ナイト」

前作「マスカレード・ホテル」の続編です(前作のレビューはこちら )。原作が東野圭吾さん、主演が木村拓哉さんと長澤まさみさん。日本という枠を飛び越えて世界的な人気と知名度を誇る最強布陣で製作されたなんとも豪華な作品です。これは観に行かないという選択肢はありません。

話の大枠は、前作と同じく、ホテルの中に殺人犯人が紛れ込んだことから、木村拓哉さん演じる刑事がホテルマンに扮してロビーに立ち、長澤まさみさん演じるホテル従業員(前作から話が進んで本作ではコンシェルジュになっています)らの協力を得て捜査を進めるというものです。

前作では「潜入捜査官であるホテルマン」という設定に現実味を持たせるための説明的描写に時間がされていましたが、続編である本作ではそのあたりは最小限に留められ、ミステリとしての本筋のストーリー展開に注力されています。メインストーリーとの関係性がよくわからないショートストーリーが連続し、終盤になってその伏線が次々に回収されていく流れも健在。

ただ、テンポの良さと引換えに、一つ一つの伏線についての説明が省略され過ぎているという印象を持ちました。テンポが悪いミステリほど退屈なものありませんが、その一方で、人物像や心理描写の掘り下げが無くしては視聴者の心を掴むどんでん返しも演出できません。このあたりのバランスの取り方は前作の方が上手かったように思いました。

とは言え、大きな破綻は無く「王道の作品」としてのハードルをちゃんと超えてきていて、最後まで楽しんで鑑賞することができました。こういうしっかりとした作りの映画に安心して身をゆだねて映画館で過ごすというのは、非常に贅沢な時間の使い方ですよね。秋の訪れとともに映画を観たくなった方には、観るべき候補作の1つとしてお勧めします。

今後公開されていく映画は、大半がコロナ禍のもとで製作されたものです。コロナ以前とは全く違う状況で予算も行動も制約される中で、クオリティを落とすことなく作品を仕上げるのが非常に大変なことだということは想像に難くありません。改めて、映像制作に関わっている方々の努力に賛辞と感謝を送りたいと思います。