山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(Spider-Man: No Way Home)」

劇場公開時に一早く映画館に行って鑑賞していたものの、レビュー記事の作成が大幅に遅れていました。web配信が始まりBlue-ray版とDVD版も販売されましたので、それに合わせてレビュー公開です!

トム・ホランド(Tom Holland)主演の「スパイダーマン」シリーズの第三弾。シリーズ三作とも製作スタッフがほとんど変わることなく、二年に一度という短いスパンで最終作の本作まで公開に辿り着きました。前作の最後で、主人公・ピーターが正体を明らかにされてしまったところから物語が始まります。

このブログでも何度か書いていますが、私はスパイダーマンが大好きです。とにかく、手元から蜘蛛の糸をびゅっと伸ばしてサーカスの片手ブランコのように移動するアクションが好きでたまりません。スパイダーマン関連の作品については、本ブログでシリーズ前作「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(Spider-Man: Far From Home)」及びスピンオフ作品の「スパイダーマン: スパイダーバース(Spider-Man: Into the Spider-Verse)」のレビューを掲載しているので、そちらもご覧ください。

さて、前半は、ピーターが人々の記憶を消そうとするものの途中で失敗し、それによって生じた時空のひずみから見たことも無い敵が何体も登場するという展開。ここでピーターに手を貸すのがアベンジャーズの仲間だったドクター・ストレンジだったり、時空のひずみからやって来た敵が過去のスパイダーマンシリーズ(サム・ライミ監督版、マーク・ウェブ監督版の各シリーズ)の敵キャラだったりするので、どうも日本アニメのような箱庭の中での自作自演な感じが漂っていることは否めません。

しかし!本作の真骨頂はここからでした。物語後半から、全く予想もつかない展開が繰り広げられ、視聴者の心は見事にかっさらわれていきます。往年のスパイダーマンファンにとってはこれ以上ないほどのサプライズも盛り込まれていて、過去のどの作品にも無い大団円の終幕まで怒涛の展開が続きます。公開前の予告編でも、上手にサプライズを隠していましたね。見事な広告戦略です。

過去のスパイダーマン作品のレビューでも言っていることですが、スパイダーマンという作品の魅力は、冒頭で触れた独特のアクションシーンに加えて、精神的に未熟な主人公がそのままヒーローになってしまい様々な矛盾に直面し思い悩むという心理的な葛藤の部分にあると私は思っています。敵にこっぴどくやられて、もうスパイダーマンはやめた!と自暴自棄になって、でもそこから周囲の助けを借りてなんとか立ち上がる・・・このような一連の様式美こそが、スパイダーマンの世界観の骨格を形成していると思うのです。

この点、本作のスパイダーマンは心理面での葛藤が見事に表現されていて、久々に黄金パターンのスパイダーマンに触れることができた気がしました。本作のスタッフが、スパイダーマンを心から愛し、理解し、持てる技術を駆使してスパイダーマンの世界感を再現しようと努力したのがよく伝わってきました。目頭が熱くなる場面が何個もあり、本当によくこんな展開で映画を作ってくれたなあと、制作スタッフ各位に心からお礼を言いたくなりました。

本作は言わば「伝家の宝刀」を抜いてしまった禁断の一作であり、今後は同じプロットで作品を作ることは絶対にできません。したがって、次のシリーズからはまた元に戻って、新しいスパイダーマンがゼロから構築されていくことになるでしょう。またしばらくは、次のシリーズが始まるのを楽しみに待ちたいと思います。