山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「シン・ウルトラマン」


そのキャリアの絶頂期を迎えているであろう庵野秀明さんが本気で作ったウルトラマン映画。私も、庵野秀明展で制作中の「シン・ウルトラマン」を垣間見て以来、ずっと劇場公開日を楽しみにしていました。5月13日の公開初日の早朝に映画館に突入したところ、平日の朝、通勤・通学の時間帯にもかかわらずほぼ満席の状態でした。庵野氏と同じく子供のころにウルトラマンシリーズのテレビ放送をリアルタイムで見ていたと思われる世代、50代から60代くらいの方も沢山来ていました。

2016年公開の「シン・ゴジラ」と同じ庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督のコンビで、テレビシリーズのウルトラマン(1966年にテレビ放送していた初代ウルトラマン)をベースに基づきつつもオリジナルストーリーで映画化したもの。斎藤工さん(=ウルトラマン)と長澤まさみさんという文句の付けようがないダブル主演に、西島秀俊さん、早見あかりさん、田中哲司さん、山本耕史さん、嶋田久作さんという、安心感満載のキャスト。主題歌は米津玄師さん。「金と人は揃えるからとにかく良い映画を作って欲しい」という制作会社の声がこちらにまで聞こえてきそうな超豪華布陣が終結しており、製作陣にかかるプレッシャーも相当なものだったと思います。

本編を観た感想ですが、まず、「シン・ゴジラ」と同様、かつてのオリジナル作品への最大限の敬意を込めて、オリジナルに忠実でありながらも現代風にアレンジしたリニューアル版として作られていたのがとても良かったです。物語の展開も、造形も、音楽も、画面全体の薄暗い雰囲気も、すべてがオリジナルシリーズへのオマージュとして構成されているという徹底ぶり。テレビシリーズさながらのレトロなタイトルバックから始まり、怪獣が暴れまわるシーンやウルトラマンとの格闘シーン、さらに、終盤の宇宙空間における命をかけた戦いまで、どことなく「昭和」な雰囲気に仕上げられていて、そうでありながらも、単なる懐古趣味に留まることなく、オリジナルストーリーで新しいエンターテイメント作品として作られていました。

ストーリーについては、従来完璧に近い存在だった宇宙人のウルトラマンが、それと相反するように脆弱で矛盾に満ちた人間と合体することで、却って自己のアイデンティティと向き合うという枠組みが非常に面白く感じました。ウルトラマンは人間に興味を持ち、図書室の様々な書籍を紐解いて人間の真理を探究しますが、結局、人間として生きることでしか人間を理解することはできないのだと悟り、宇宙の故郷に帰ることを放棄して地球に残ります。「エヴァンゲリオン」のような退廃的な価値観や絶望に満ちた深刻さといったものは無く、社会的な責任とは切り離された状況での純粋な自己探求心に焦点があてられており、ここでも「昭和」的な哲学観念を感じました。

ただ、逆に言えば、現代的なヒーローものの作品、米国映画に代表されるような派手な視覚効果や勧善懲悪の世界観に慣れている人は、本作におけるウルトラマンの行動原理や作品そのものの指向性が理解できず楽しめないと感じるかもしれません。実際そのようなレビューも見かけますし、ともすると私自身も、ウルトラマンのテレビシリーズや庵野氏のかつての作品を知らない真っさらな状態で本作を見たら全く違った感想を持ったかもしれません。観る人によって感想がガラッと変わる作品の一つなのだと思います。さて、皆さんはどのような感想を持ちましたか・・・?