山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「沈黙のパレード」

野圭吾さん原作の「ガリレオ」シリーズ映像化最新作。劇場版としては、2008年の「容疑者Xの献身」、2013年の「真夏の方程式」に続く第三作になります。説明不要かと思いますが、福山雅治さん演じる天才物理学者・湯川と柴咲コウさん演じる若き女性刑事・内海のコンビ、そこに北村一輝さん演じる熱血漢の草薙刑事が加わり、難事件の解決のために奔走します。監督の西谷弘さん、脚本の福田靖さんを始めとする制作スタッフも毎度おなじみ。熟練の俳優陣・製作陣による最新作はどのような出来栄えなのでしょう・・・ちなみに原作は未読です。

表題がそのまま話のプロットになっており、街をあげたパレードが行われている最中に殺人事件が発生し、何らかの関与をしているはずの関係者たちが何故か一様に沈黙を保つ、という物語です。冒頭である登場人物の半生が描かれるのですが、まず、この部分の完成度が一つのショートムービーとして公開できそうなくらいに質が高く、そこから一気に本筋の事件へと雪崩れ込んでいく見せ方は流石です。中盤、少々展開がもたつく部分もありますが、後半では緊張感のある心理的駆け引きと謎解きの応酬で息もつかせぬ展開。最後は、一つの難事件の解決を見届けたという感慨とともにエンディングを迎えました。頭と尻尾が良くできている映画に外れはありませんね。

俳優陣の演技はリアリティに溢れており、特に、北村一輝さんと椎名桔平さんが対峙するシーンでの二人の演技は迫真性に満ちていて、張り詰めた重い空気感が画面を支配していました。これと全く逆の方向性なのが、福山雅治さん演じる湯川教授の、ちょっと浮世離れした軽いタッチの雰囲気。この重と軽、陰と陽のコントラストのちょうど良い加減が、ガリレオシリーズの真骨頂かと思います。

東野圭吾さん原作の作品は、毎年のように劇場作品が公開されていますが、やはり、このシリーズの安定感と完成度は突出しています。ちょっと可哀そうなのは、劇場版第一作の「容疑者Xの献身」が大傑作であったが故に、その後の作品にも常に高い期待値が与えられてしまうこと。そんな中でも、本作はコロナ禍にも負けず(特にパレードのシーンは撮影に苦労したと思います)、ちゃんと視聴者の期待に応えるものとして出来上がったものと思います。

これから本作を観ようという方は、誰が何を沈黙しているのか、沈黙していたのか、という点に意識を向けて観てみると、一層深く物語の世界観を味わうことができますよ!