山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

書籍:さかはらあつし「小さくても勝てます」(ダイヤモンド社)

小さくても勝てます

小さくても勝てます

 

知人に薦められて読んでみたのですが、なるほど、これは素晴らしい!最近読んだ本の中ではちょっと抜きん出た感じのする一冊です。

新宿に実在する理容室「ザンギリ」を舞台にした事業再生の物語。実話を元にしているのは確なのですが、その一方で明らかにフィクションだとわかる設定もあり、どこまでが実話でどこからが創作なのかよくわかりません。しかし、実話かどうかなどということは、この本の魅力を語る上では些末な要素に過ぎません。

経営学的な理論を現実にあてはめて成功する様を描く作品は数多くありますが、その中でも本著は、絶妙なキャラクター設定と、右肩上がりの単純な成功物語にとどまらない起伏のあるストーリーにより、何とも人情味に溢れた味わい深い世界観を構築することに成功しています。読後には、映画や長編小説に通じる清々しい余韻を味わうことができました。

英語の学習法や読書法などに触れた蛇足の部分もありますが、それが故に、却って一般的なビジネス書としても通用する普遍性を支えているような気もします。気が滅入ったときに勇気をもらうために読んでも良し、ビジネスのヒントを得るために読んでも良し、経営学理論の入門書として読んでも良し。既存のジャンルに捕らわれない稀有な一冊です。

作者のさかはらあつし氏は、実世界でも「役二立三(やくにたつぞう)」と名乗って、映画製作、書籍執筆、経営コンサルなど、ジャンルに捕らわれず「人の役にたつため」の様々な活動をしているそうですね。実は、私も、ステレオタイプな職業カテゴリーの枠を超えて、この世の中を生きていきたいと強く思っています。このブログを初めたのもそんな動機によるところが大きかったりします。

俄然、かさはら氏の活動に興味が湧いてきました。