山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「SAND LAND」


原作未読、そしてほとんど予備知識の無い状態で映画館に突入。上映が始まり最初のシーンを見た瞬間に全身に電撃が走りました。おお、鳥山明さんの絵がぬるぬる動いている・・・これは良い作品に違いない!!


物語は極めてシンプル。水不足に苦しむ世界を救うために、悪魔の王子であるベルゼブブと、年老いた保安官であるラオが、オアシスを求める旅に出ます。今風の作品であれば、話の展開に緩急をつけたり、キャラクターの正確に二面性を持たせたりして「通り一遍では無い感じ」や「奇抜さ」を出そうとするところだと思いますが、本作はそのような小細工は無し。勧善懲悪の王道のストーリー展開の中で、最大公約数的な主人公たちの人物像や心理を丁寧に正面から掘り下げていきます。

ビジュアル面の素晴らしさは冒頭のとおり。単にデザインや動きがすばらしいだけでなく、年老いたラオの皺からダンディズムが香り、鉄板の上の錆びたネジから機械油の匂いが漂う。細い一つ一つのビジュアルパーツに非常な説得力を感じました。これらが総体となって、現実感に満ちた作品の「世界」が生き生きと描かれています。

大人も子供も心を躍らせるファンタジー。歯切れのよい展開と、潔くも深みのある結末。私たちが本当に見たいエンターテイメントは、こういうものだったのではないでしょうか。最近の作品はちょっと変化球過ぎませんでしょうか?