山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

映画:「シン・仮面ライダー」

仮面ライダーはお好きでしょうか?実は、私は仮面ライダーシリーズにはほとんど馴染みがありません。それもそのはず、私の幼少期のころ=1980年代は、仮面ライダーシリーズの新作がほとんど作成されない冬の時代だったのですね。その後、1990年代に仮面ライダー生誕20周年記念を足掛かりに劇場用作品が制作され、2000年代になってようやくテレビシリーズの新作が作られるようになりました。ですので、仮面ライダーのコア支持層は、現在60歳台である1960年代生まれの人と30歳代である1990年代以降生まれの人ということになると思います。

本作「シン・仮面ライダー」は、庵野秀明氏による「シン・ゴジラ」「シン・ウルトラマン」に続く実写リブートシリーズの第3弾。人類の支配を目論む秘密結社によって昆虫合成型改造人間にされてしまった仮面ライダーが秘密結社の壊滅のために戦うという、初期テレビシリーズをベースにしたストーリーになっています。

設定も現代風に改変されているものの、基本的期には初期テレビシリーズ当時の古風な雰囲気を踏襲しており、レトロな雰囲気に溢れています。主人公である二人の仮面ライダーを演じる池松壮亮さんと柄本佑さん、ヒロインである緑川ルリ子役に浜辺美波さんと、配役もどこか古風な雰囲気の役者さんが揃っています。このレトロ志向、懐古志向については、視聴者の好みが大きく分かれるかもしれません。

前2作で監督を務めていた樋口真嗣氏が制作に参加しておらず、作品全体として、視聴者目線でのエンターテイメント性の追求が一歩後退し、マニアックな方向性への志向に拍車がかかっています。ストーリーや設定も、非科学的な要素が満載。しかし、このような一見すると欠点になるような部分こそが、この映画の最大の魅力と言えます。

テレビシリーズから引き継いだ少々いい加減な設定について、大真面目に掘り下げて非常に細かく丁寧に描いているのを観ていると、感心しながらも思わずクスっと笑ってしまいます。そんな風に、時折心の中で「おいおい!」という感じで突っ込みを入れながら独特の作品の世界観を楽しんでいると、あっというまに2時間が過ぎてしまいました。

最後、エンディングロールで子門真人さんが歌うテレビシリーズのテーマ曲が連続して大音量でかかるのも、悪趣味の一歩手前という所でぎりぎり収まっており、お見事。楽しんだもん勝ちの一作です。