山猫が見た世界

生息地域:東京、推定年齢:40歳前後、性別:オス

アニメ:「鬼滅の刃」


親が子どもと一緒にアニメを見て子どもよりも熱心なファンになっているとか、原作単行本の売れ行きがとんでもないことになっているとか、凄い作品だという話は幾度となく耳にしていたものの、何となく手を出せずにいた「鬼滅の刃」。新型コロナウイルスの影響で映画館に行くことを回避し、何か代わりになるものはないかと軽い気持ちで第一話を見だしたところ・・・凄まじく面白い!あっという間に公開中の全26話を一気に見終わってしまいました。中毒者を次々と生み出しているのも納得です。

まだ近代文明と前近代的なものが入り混じっていた大正期の日本。一家で慎ましく暮らしていた主人公・炭次郎は、自分の不在中に襲ってきた鬼に家族を惨殺され、かろうじて生き残った妹は鬼に変えられてしまいます。妹を人間に戻し、一家の仇を果たすため、炭次郎は、厳しい修行の末に鬼殺隊に入隊して鬼と戦います。

熱血漢な主人公と癖のある仲間、冷酷無比で圧倒的な力を持つ敵。こういった少年漫画の王道的設定をベースにして、基本的には子供っぽいノリで面白おかしく話が進んでいきます。その一方で、鬼が人を食べ、人が鬼の首をはねて退治する(あるいは鬼同士で殺しあう)場面では、容赦のない残虐な描写が数多く登場します。このコミカルさとグロテスクさの振り切れ具体と絶妙なバランスが、とても気持ち良い。

鬼は首を切られると死滅するのですが、皆、死を迎える瞬間に自分の人生を回顧します。死の恐怖に絶望する者もいれば、思うような生き方ができなかったことを後悔する者、鬼として生きていくことに終止符を打つことができて安堵する者など様々です。鬼たちは憎い敵だったはずですが、彼らが死の刹那に自分の人生を清算する様子は儚くも美しく、私たちの心にじんわりと染み込んできます。

原作も面白いのですが、原作未読の方は、是非、アニメ版から入ることをおすすめします。その理由は、何といってもアニメーションとしてのクオリティが圧倒的だから。原作だと説明不足な感のある部分を補いつつもテンポ良く進むストーリー、息を飲むほど美しいビジュアル(特に必殺技のシーンは圧巻!)、アニメーションだからこそできる斬新な演出、これ以上ないくらいハマっている音楽と声。今まで国内外の様々な映像作品を見てきて目が肥えているつもりの私ですが、アニメーションにまだこれ程の可能性が残されているとは思いもよりませんでした。

2020年中にアニメ版に続くエピソードの映画が公開されることになっていますが、これは原作中で最も泣けると言われている部分。きっと、ちょっとやそっとでは動じないと高をくくっているおじさん(私)の涙腺を、またしても軽々と崩壊させてくれるでしょう。